コンロッドの断面形状について考えてみた。

今日何気なくツイッターを見てて目に止まった、エンジンパーツのコンロッドの断面形状についてのツイート。
それは「H断面コンロッドとI断面コンロッドでは、どちらが良いか?」というものでした。
個人的にも気になる内容だったので、自分的な考えをここに書いてみたいと思います。
まず最初に考えるべきはコンロッドが何のために必要なのか?ということ。
これを整理しておかないと考え方がブレてしまいます。
まずコンロッドは連接棒とも言われる通り、ピストンとクランクシャフトを繋ぐパーツで、ピストンの往復運動をクランクシャフトに伝える役割があります。その為、燃焼室内の爆発によって押し下げられるピストンの力に耐えられる強度が必要です。また、クランクシャフトの回転運動からくる遠心力にも耐えられる強度も必要で、これらを考慮しコンロッドの形状を考えなければなりません。
本来はもっと様々な要素を考慮しながら設計していくのでしょうが、今回の議論の焦点である断面形状を考える上では、この2点に的を絞って考えてみたいと思います。
仮に、断面が同じ面積のH断面コンロッドとI断面コンロッドがあったとして考えます。
断面積が同じであれば、ピストンが燃焼室の爆発によって垂直に押し下げられる力に対しては、同じように耐えられるはずです。
ではクランクシャフトの回転運動からくる遠心力に対してはどうでしょうか。
遠心力に対しては、コンロッドに対して横方向への遠心力が働きます。その為、横方向に2本のリブが立つ形となるH断面コンロッドの方がI断面コンロッドよりも強いと考えられます。
ツイッターでは、以下のような画像が例に挙げられ、受圧面積についての説明がありました。

私の考えでは、これは今回の議論からは的外れだと思ってます。
画像にある受圧面積の部分に外的な力が直接掛かるのであれば、ある程度理解できなくもないですが、リブ形状について正しく理解しているのであれば、H断面コンロッドの方が折れやすいという理解にはならないはずです。
では、H断面コンロッドの方が優れているのでしょうか?
私の考えでは、一概に優れているとは言えないと思います。
先の例では同じ断面積という前提で考えた結果、H断面コンロッドの方が遠心力に対しては優れていると理解しています。
しかし、一般的にチューニングパーツとして市販されているH断面コンロッドは、純正のコンロッドに比べ、軽量に出来ています。これはレスポンスの向上を図りつつ、強度も確保できるからでしょう。純正コンロッドの強度を確保しながら軽量化したものがH断面コンロッドとも言えるでしょう。
昔のNAエンジン全盛期の頃は、レスポンス重視でエンジンパーツの軽量化やバランス取りがよく行われておりました。
しかし今となってはターボエンジンでパワー重視な考えが多くなり、H断面コンロッドのメリットである軽さよりも、ピストンからの圧縮圧力に耐えうる強度が必要となった事から、純正コンロッドと同じ形状となるI断面コンロッドが出てきたのだと思われます。
I断面コンロッドの方が製作時のコストも低く、大量生産にも向いているのも一因でしょう。
チューニングパーツのI断面コンロッドは、純正コンロッドよりも高度な材料を使用することで軽量化と強度を確保していると思われます。
以上より話をまとめると
NAエンジンのように軽量化によるレスポンス重視で考えるならH断面コンロッド
ターボエンジンのように高馬力にも耐えうる強度重視で考えるならI断面コンロッド
と言えるのかもしれません。
勿論、同じ強度の材料で制作するとなれば、私の考えではH断面コンロッドの方が良いという事になりますが、エンジンの使用用途に合わせて様々な要素を考慮しつつ形状を決定するべきではないか?と言わざるを得ないとでしょうね。
ちなみに私の仕事は造船所で船のエンジンの整備に20年程携わっていますが、船のエンジンの殆どがI断面コンロッドです。これは製造コストを抑えつつ強度も確保できる形状だからと思われます。逆にH断面コンロッドは皆無です。
以上、書いていて自分でもまとめきれていないと思うところも多いのですが、設計は専門ではないのでご了承ください(;^ω^)